左手を育てるということ

バイオリンの上達において、左手は大きな鍵を握ります。とはいえ、思うように動かせるようになるまでには時間がかかります。日常ではあまり使わない筋肉を動かし、神経と結びつける必要があるからです。
成果を得るには、単純な練習でも一定の回数をこなすことが不可欠です。積み重ねを経て初めて筋肉は働き始め、指先が思い通りに反応してくれるようになります。幼少期から学ぶのが望ましい」と言われるのも、このためです。
練習量は短いに越したことはありません。そのためには、自分の体に「足りない物」常に意識して取り組むことが大切です。
バイオリンを演奏するためには、まず理想の形をつくれる柔らかさと、それを支えるしなやかな筋肉を身につけることが大切です。そうすることで、無駄のない動きや美しい音が生まれ、正確に狙った場所へと指を運ぶことができるようになります。しかし、その理想の形は誰かが答えを用意してくれるものではありません。
自分自身で工夫を重ね、試行錯誤を繰り返す中で身につけていきます。
どのように身につける?
導入期は「自然に弾く」のではなく、ネックの上に指が軽くかぶさっている状態を意識しながら弾くことが大切です。
習慣として繰り返すことで形は定着していきます。
その補助の一つとして 手トレ を使う方法があります。
手トレは理想的な演奏形に手をはめ込むことで、型を体に覚え込ませやすくすると同時に、生徒に不足しがちな柔軟性を補ってくれる役割も果たします。
- 理想的な形を体に覚えさせる
→ 正しい姿勢や指の形を、自然に再現できるようになります。 - 指の広がりをサポートする
→ 届きにくい小指や、開きにくい指も無理なく練習できます。

肘と手首の位置
- 肘は入れすぎず、出しすぎず。弦移動に応じて自然に動く。固定はNG。
- 手首と腕は直線が基本。
- 横方向に曲がると指が不自由になる。
- 前後に出すぎ/入りすぎても指の動きや押さえに悪影響。
人差し指の付け根とネック
- 触れても触れなくてもよい。
- 大切なのは「握らない・掴まない・押さえ込まない」こと。
- 親指と人差し指で軽く支え、手全体の移動を助ける。
左手の形
→ 理想は両方を身につけ、状況に応じて使い分けること。
方法1:指の付け根を指板と平行に → 指は直角に近い/運動効率◎/ただし腕の緊張やビブラートが狭くなる。
方法2:親指を指板に対して約45度に置く → 最も自然で推奨/ただし小指が遠くなる。