弓の持ち方の基本理念
バイオリンの弓の持ち方で大切なことは、
- 弓身(スティック)を安定させること
- 音の創造を、できるだけ少ない労力で可能にすること
前腕の強い力と内側の回転を活かすことで、指の圧力は解剖学的に自然かつ最も経済的な方法で弓身に伝わります。
また、スティックを抱きこむことで人差し指は弓芯を支配し、演奏者の意志を弓に強く反映させることができます。
基本形の重要性
弓の持ち方には「基本形」があります。
これは単に形を守るためではなく、どのような動きにも柔軟に対応できる最適な形だからこそ学ぶべきものです。
右手の動きは左手よりも目に見えにくく、抽象的にしか表現できません。左手の指は直接弦に触れますが、右手は弓という媒体を通すため、感覚と耳だけで両手をマスターする必要があります。
そのため、解剖学・生理学的な裏付けを得て学ぶことは、技術を習得するための早道になります。
各指の役割
親指
- 位置:人差し指・中指の反対側に置きます。弓のフロッグとスティックに半々くらい寄せかける感覚です。
- 接触部位:指の腹や先ではなく、爪の横あたりという微妙な部分が適切です。
- 注意点:
- 指先で持ちすぎると硬直して役割を果たせなくなる。
- 力が入りすぎて反ったり直角に曲がるのはNG。
- 理想形:軽く曲げて「くの字」にし、バネの役割を果たす。
- 役割:他の指から伝わる圧力をコントロールし、全体の柔軟性を支える。

図-バイオリン各駅停車より
人差し指
- 位置:第一関節と第二関節の間、または第二関節をスティックに当てます。中指とは少し間隔を空ける。
- 注意点:
- 深くかけすぎると手が内側に傾き、重心が常に人差し指に寄りすぎる。
- 浅すぎると、指を閉じるテクニックに関与できなくなる。
- 役割:圧力の調整が大きな仕事。瞬間的なアクセントなど、音に明確な表情を与える役割を担う。
中指
- 位置:親指と向かい合う位置。第一関節をスティックに触れさせる。
- 持ち方:親指と中指で「つかむ」ようにすると力が入りすぎるので注意。
- 注意点:
- 伸びきったり反ったりしない。
- 親指の先と軽く触れる程度が目安(個人差あり)。
- 役割:安定感を与える。親指とのバランスを取る中心的存在。
薬指
- 位置:中指から少し間隔をあけて置き、フロッグの反った面に腹を軽くつける。
- 注意点:
- 浮かせてしまうと大きく損をする。
- 力を入れすぎず、密着させすぎず。
- 役割:
- 弓の重厚なフォルテを支える重要な指。
- 人差し指だけに重みをかけたフォルテとは異なる豊かな音色を生み出せる。
小指
- 位置:フロッグの端あたりに軽く曲げて指先をのせる。薬指との間は広げすぎない。
- 注意点:
- 突っ張ってバネの役割を果たさない、または完全に落ちてしまうことが多い。
- 放置すると全く使えなくなる。
- 役割:小指は使わないとできないボーイングも多く、弓をコントロールする繊細な役割を持つ。
まとめ
弓の持ち方は単に形を守るためではなく、音を自在に操るための最適な方法です。
親指・人差し指・中指・薬指・小指、それぞれが独自の役割を担い、バランスよく働くことで、初めて弓は自由に操れるようになります。