左手 考 

  • 能率を高める事

左手のテクニックは時間が一朝一夕にはいきません。演奏動作が日常にない動作だからです。「左腕を湾曲させ」「左指で弦を1㎜単位の正確さでおさえていきます」そこには、目には見えない神経を繋げ、独特の柔軟さが要求されます。
逆を言えば、一連の問題をクリアすれば道が見えます。

単純な反復運動を何回も行う事も大切です。会得までの時間は短いに越した事はありません。それには、演奏形態に見合った「理想的な左手」をイメージして頂きたいのです。闇雲に練習するのではなく「無駄な動きをセーブ」「各指の独立」「無駄のない練習」で作り上げてゆきます。

  • 左手も音色を作る
    音程を取る他に音色も作ります。指の「下し方」「上げ方」又「指の腹でおさえるのか?」「先でおさえるのか?」で音の明暗をコントロールできます。打ち下ろすスピードを適度にし弦長を鋭利に切るように押さえれば透明な音が生まれます。
  • 左手の仕事は?
    1 「押さえ・離すの上下運動」 人差し指から小指まで自由に指板を叩けるように
    2 「ずらす」  近い距離の移動や他弦への移動
    3 ポジションチェンジ
    4 ビブラート
  • 演奏と身体

スポーツをマスターする時1カ所ずつ見ていく人はいません。身体は全体で一つです。
初めに全体をイメージしてから1カ所ずつ確認します。

  • 左腕から見てゆきましょう。脇が閉まると?
  1. バイオリンが下がります。
  2. バイオリンが下がると、弓が滑り落ちてしまいます。
  3. 左手の運動機能が悪くなります。
  4. バイオリンと体の間の空間は大切な共鳴体です。音の響きが悪くなります。

初心の時短期間でも楽器が下がっていれば取れない癖になる事も多いです。
楽な持ち方は癖として定着しやすいです。

基礎を身につければ曲に集中しても 姿勢は崩れません。

楽器が下がってしまう方は支柱が効果的
初めの数カ月(数週間)だけ気を付ければ
自然に!

年長者の場合は、バイオリンを保持して歩くなど。
どうしても下がる時は、1,2回ネックの下に支えを入れるといいです。
特に指導者がいない自宅は癖が付きやすいので 棚に乗せるなど工夫をお勧めします。


  • 肘の位置は バイオリンを正しく構え 手を正しくセットすれば自然に収まります

余程の「入れすぎ」「出し過ぎ」だけ注意して下さい。
しかし、移弦の際に バイオリンの下方で、肘の位置が変る事は 初歩のうちは意識する必要があります。
「基本の位置」はありますが、固定される事なく臨機応変に移動します。

  • 手首

手の甲と腕は一直線が基本です。
出過ぎると手の外側の筋肉が緊張し
指の動きが悪くなります。

入り過ぎると指が寝てしまい動きが悪くなると同時に、音が曇ってしまいます。

  • ネックをどのように持ちますか?

1 人差し指の付け根はネックに触れてもいいですか?  
教本を見てもマチマチです。個人差のある問題なのでしょう。
逆を言うと「運動機能はどちらでも変わらない」という事です。 ※「触れている」はいいですが、「密着」「握る」「頼っている」はNGです。
2 理想の形は? 
人差し指から親指の形が、自然に丸い「O型」か「V型」になっていれば大丈夫です。 

必要最低限の力で作るV型
力が抜けたO型
✖「r型」は力を入れている時が多い

画像 各駅停車より


3 手のひらとネックの角度

a 左指の付け根とネック平行にが平行  

デメリット
手首と腕の捻りが必要であるため、少し力が入りやすいがあります。
ポジションチェンジの時手が動きにくい。
ビブラートをかけても効果が出ない。
メリット
短い小指がネックに近づくので、4本の指の距離が同じになる。
この持ち方の練習過程で、柔軟さが増す。


2 手のひらとネックが45度推奨

デメリット
短い小指が弦から遠くなる。
メリット
人体の構造上理にかなっている。
ビブラートが効果的にかかる。
ポジションチェンジで比較的動かしやすい。


  • 親指について

親指の位置、力加減は左手の機能を上下します。
1 親指の3つの要素
a 人差し指から小指に逆圧をかける。
b ポジションチェンジの誘導(親指を使わない時もある)


 親指先行
 近いポジションに行くとき親指だけ先にずらしておきます。
 チェンジする時にバイオリンに衝撃を与えにくいからです。
 親指同行
 親指を含む手を同時に形を崩さずに行うチェンジです。移動が長い時、素早いチェンジが要求されるときに使います。移動中親指は脱力しネックに沿わせます。到達点ではブレーキの役割を果たします。


  
c バイオリンを臨時的に保持する。

2 親指の位置
4本に逆圧をかけやすい位置です。4本に均等に支えるには人差し指から中指までの任意の位置に置きます。
3 親指のどのあたりでネックと触れますか?
  指に長さと手の大きさによって幾通りか候補があります。こちらも、4本に逆圧をかけやすい位置です。避けるべきは、「親指の付け根で握って持つ事」と「親指の腹にネックをのせて支えてしまう事」です。
4 親指の深さ
又、深く持った方が柔らかい音が出ますし、浅く持った方が小指が楽です。どちらでも対応できることが理想です。4本の指の上下運動がスムーズにできるよう補助できればいいのです。

  • 1から4の指

1 指の形は決まっていますか?
  脱力して丸みを持った形にしておきます。「立ちすぎて爪で押さてしまう」「寝かせすぎて腹でおさえる」のではなくネックと爪は45度が目安です。指の形が悪いのには2通りあります。
A  癖が付いているのみ
  何度も反復練習して手に覚え込ませます。
B 身体的問題
 弦を押さえると4本の指の向きがバラバラになる。
バイオリンで練習しても、指の形そのものは変わりません。 トレーニングで数週間で矯正する事が多くの場合可能です。
aは「まむし」と言い 関節の柔らかい幼児や子供の代表的な悪い形です。
トレーニングとともに楽器でも気を付けて弾くようにします。関節の成長とともに正しく押さえるようになります。

2 爪の長さ
週に2回くらい切ります。指板にあたるようでしたら演奏できませんし、楽器を傷つけます。


3 各指を各指を独立させる
 楽器を弾くうえで指が1本1本独立している事は必須です。手を捻じってバイオリンを弾こうとするとき、指が頼り合って 自在に動かせないのが分かります。特に小指は弱く短く頼りないです。しかし、人体には隠された能力があり、練習すれば かなりの年齢でも神経回路を繋いだり、鍛えれば筋肉を強くなります。

4 指の拡げ方
指と指との間隔を開けて押さえるとき 指の付け根から拡げます。
残念ながらバイオリンを弾くだけでは 広がりません。特にある程度の年齢になると
バイオリンでは期待できません。バイオリンは結果を試す所で指を拡張機能はありません。
「演奏動作を想定して指をストレッチングする」OR「器具を使う」事をお勧めします。

フィンガリング

  • 基本3パターン

まず、3パターン(4本同時に置く)を覚えます。・・・1本1本置くと手の形が崩れやすくなります。
4本一度に置く事を覚えたら、引き算で3本指、2本指1本指にしてゆきます。
人間の指に隠されたとは侮れないもので、練習すればする程神経回路を繋げ、全く同じ場所を押さえるようになります。
その時、理解できる年齢の方にはどこを押さえれば何の音という事を把握します。

教室ではこういった事をマスターし定着した上で、次の段階に向かいます。

  • 一度左手チェック
  1. 4本の指が正確に並んでいる。指を上げ下げした時も4本すべてが同じ方向に向くことが望ましい。
  2. 指の曲げ方は
  3. 肘が内側すぎたり、外側すぎないか
  4. 親指の形は正しいか?また親指でバイオリンを支えていないか?
  5. 脱力できているか


2 たたき
 指の垂直運動を「たたき」と言います
 「金槌」と「カスタネット」のイメージです。
 下す時は「金槌」
 金槌に頭の重さを利用して釘を打つように、指の重さと浮力を利用します。
 この時、手のひらの位置が重要です。
 上げる時には「カスタネット」をイメージします。
 カスタネットをパッと離すと元の状態に戻る感じです。
「下ろす」事は意識して行われるのですが「上げる」事の重要性を認識さえている方が意外に少ないです。
上げる事は、音色の処理であり、次の音の準備で、次の音の発音そのものの時もあります。次の音を弾くのに都合の良い形でスタンバイしています。

 運指速度を上げるには
a 指が回らない人は、「下げる」速度に比べ「上げる」速度が遅い人が多いです。下げるのは引力とバネを利用しますが、上げる方はバネのみによる運動であるからと考えられます。
b 指を上げる高さ
  速度は距離に比例しますので、不必要に指を伸ばしません。しかし、あまり低過ぎたら打弦した時に音の切れが悪くなります。左手が作る音を耳で調整しながら演奏します。
 運指は時には ミリ秒単位の速度が要求されます。わずか1cmの差も大きな結果になりえます。

どちらも指の付け根から動かします。

指の力を抜きます。指の付け根を意識しながら[コン」と鳴らします。乾いた木の音を目指します。ハッキリした音を出したいスラーで音の粒を立たせハッキリ弾きたい時に向いていますが、落ち着いた曲想で使うと叩く音が気になるし、音が硬質になるので不向きです。

  • 「たたき」の感覚をつかむには?
  1. 左手をを机の上にピアノを弾くような形で脱力して置きます。
  2. 右手で左指のどれでも1本をつかみ、軽く引っ張り上げる(左指は軽く曲がっている)
  3. 掴んだ指をパット離すと、コンと音を立てて落ちます。そうならない時は力が入っています。
    ※この感覚は「たたき」と同じです。


  • 圧力の調節

    1 強く押さえる時
    音出しの瞬間はしっかり押さえて良い音を出します。
    押さえないと、音が曇ったり、音程が低く聞こえたりする事もあります。
    特にフォルテの時とピチカートの時は特に意識してしっかり押さえます。

    2 弱く押さえる時
    しかし 「押さえる=力を入れる」です。
    脱力が基本ですから、不必要になったら力を抜きます。
    抜く事こそが最大のテクニックです。(入れる事は容易)
    又、抜き続けることも同様です。
    ここで言う脱力とは「不必要な力を入れない」です。
    数分でダルクなる人は力が入っています。



      

水平運動「ずらし」

水平運動とは、手がネックや弦から離れずに動く事です。
テクニックとしては指をずらしてい動かす「ずらし」「ポジションチェンジ」があります。

  • ずらし
    弦上に指を滑らして音程を取る事です。「ずらし」が正式名です。

    コツは
    a 出発点と出発点と終着点ではしっかり押さえている。
      (力が入っていると指の形が崩れます)
    b 移動は速く
      (ゆっくり行うと移動スライド音が入る)
    c 脱力する
  • ポジションチェンジ
    あるポジションから別のポジションに行くことを「ポジションチェンジ」と言います。
    バイオリンニストによっては「シフト」「チェンジ」とも言います。
    力が入ってしまう時は、弦と指の間にティッシュなどを挟み摩擦を和らげて練習します。
    1 ポジションチェンジの目的

a 音域を広げる&音色を広げる

音域を広げるだけではなく音色、音質を深く作るために必要不可欠なテクニックです。
例えばバッハの「G線上のアリア」という小品は、他の弦では表現できない音色を出したいのでg線1本でポジションチェンジをしながら演奏します。この事で曲の持つ味わいを強調できるからです。

  • ポジションチェンジについて
    指先だけを持っていくのではなく、肩から指先までの全神経を使う。(腕の角度も意識)
    移動時は、頭のてっぺんから足のつま先まで力を抜く。
    出来るだけ左手の形を崩さない。(脱力できていたら、崩れない)
    高いポジション(ハイポジション)は腕の位置とタイミングに気を付ける。

巨匠と呼ばれる人の外見(手の形、指の形、角度、力の入れ方、立ち方、練習方法など、等
)を模しても たどり着くのは現状です。
そこまで求めはしないのですが、人間は軽く挑むことに喜びを感じるのではないでしょうか?私はそうなんです。手を広げればいいんだろう! バイオリンように体を合わせればいいんだろう! 有名なバイオリニストも自分がどうなっているのか知らないのです。自分がどうしているかしか!だから私はこうしていますよ!と教えるしかないし、身体的才能たっぷりの生徒しか見ないからそれで「私は教え方が上手いなんて思っているだけ。
トレーナーでもなければバイオリンをオールマイティーにな方に教える事は出来ない。又その教え方を知っていれば才能がある子供をより磨く事が出来るのです。